後継者が身内以外にいない、社長が経営を手放す気はないのですが?

相談内容
再度ご相談させて頂きます。
前回社長の異変のことでご相談させて頂いたのですが、その後皆で話し合い、主だった社員とわたしとで社長には何とか納得してもらいました。でも帰りがけに私にあの時はああいったけど納得していないことを私に言いました。
 
今現在2社経営しています会社は、借金は多いもののこの不況の中でも売上はそこそこで、そういった意味での会社の雰囲気は悪くは有りません。ただ、後継者となると、借金が大きい分引き受けていただけそうな方はいません。
 
私は今回の社長の異変からちょくちょく社員さんと話をするようになって皆一生懸命働いて下さっているのを見てなんとかしてあげたい気持ちにはなるもののOLを4年ほどしただけでほとんど経営とは縁が無く多くの借金のある会社を娘であるというだけで経営できるものかどうかと考えています。


回答
ご相談の内容は前回の状況に追加して、会社の経営を引継ぐとしても親族以外には望めそうもない現状ということ。またお父さんは経営を手放す気はないということ、というところから出発することにします。
 
まず、あなたが二つの会社のそれぞれの取締役に入り、できたら代表権のある取締役になることをお勧めします。社長たるお父さんが代表権を手放したくないとしても、代表権を持つ取締役が複数いても差し支えありませんし、特別の条件を付けない限り各自が会社を代表することになります。まずその状態にまでもっていきましょう。できたらあなたが「社長」になり、お父さんは「会長」として、経営の一線から引いてもらって外部的にも「会長」として振舞ってもらいましょう。一般に「社長」が常時の代表者であり、「会長」は特別の場合に代表権を行使すると世間的には認識されていますから、貴方が社長になっても、貴方が頼りないと思う取引業者がいても、背後のお父さんである「会長」の存在が重みをもってきます。その辺りの微妙な外部イメージを利用しましょう。
 
次に経営についての運営ですが、社内に取締役会とは別に運営委員会をつくり、主だった社員に入ってもらいましょう (お父さんは入れないほうがよいでしょう)。そこでは営業の方針や製作現場の現状、納期のチェック、価格の確認、人事、財務状況の確認などと、できたら各自から職場改善の提案を出してもらうよう進めていきましょう。
 
ただし注意すべきことは、あくまで経営者層の一部として経営についての検討のための場であって、その場が労使問題の話し合いの場(例えば賃金問題、休暇問題、労働時間問題など)にはしないことが大事です。そのような問題を持ち込むと経営に対する団結力が落ちてしまいます。勿論労使問題は大事ですがそのための交渉の場は別にもつべきです。
 
またこの委員会の場が、第三者の非難の場や後ろ向きの話などにならないように、常に前向きの話し合いになるようにカジをとることが大切ですし、むつかしいところです。貴方はこの点に特に注意を集めてください。
 
それから話し合いの場では誰か書記をきめて細かに記録させ、事後に話し合いの内容を整理して委員に回覧しましょう。ただの言いっぱなしの委員会でないことの意識づくりのために大切です。
 
そしてその場で決められることは、その場で決めてすぐに実行に移すこと。その場では決めにくいことは、事後にお父さんと貴方が相談して決めるか、一応お父さんのアドバイスをもらうというかたちをとったらどうでしょう。お父さんもいきなり隠居扱いされても気分が良くないでしょうから。
 
社員からの提案に対する対応ですが、ただ言いっぱなしの提案では意味がありません。提案に対してどのような手順で、誰が責任者となり、何時までに結果をだす、といったところまで確認されてはじめて意味のある提案となります。だからといって思いつきの提案を否定してはいけません。提案を実のあるものにすることの意味を説明しているのですので、誤解のないように御願いします。
 
また、この委員会は取締役会とは違いますから、構成員が会社の結果に対して外部から責任を問われることはありません。最終責任は取締役会にありますので、お父さんのことを考えれば、大きな経営の変更や融資の実行などの場合には取締役会の承認をとるようにしてください。
 
あなたが経営とは無縁の状況だったということですが、ここは社員を信頼し、そして社員と社長たるお父さんとの橋渡しに徹することで、あなた自身が経営者として成長する環境ができると確信します。
 
社員有っての経営でもあり、長い経験のある経営者であるお父さんの存在有っての経営であったということは厳然たる事実ですから、そこに異変が生じても、その両者の智恵と経験を生かさなければ経営の進む方向は出てきません。
 
改めてご検討をお祈りいたします。