会社に様々な損害を与える役員を解任したいが?
相談内容
現在、電気工事下請の株式会社を経営して、14年になります。従業員4名です。
6ヶ月前まで父が代表取締役でしたが、事情により父は代表取締役を降り、取締役に就任、妻の母が代表取締役になりました。今回ご相談したいのは、父を解雇したいという事、そしてそれに伴う金銭的な事項の質問です。
父を解雇する理由として、
① 長年にわたり経費をごまかし自分の遊興費にあてていた。(今まで目をつむっていたので証明するのはむずかしい)
② 週に何日かは現場に出ず、または途中で抜けて仕事をしない。(従業員の証言および、作業日報より)
③ 従業員からの信頼がなく、横柄で、代表者としての義務、責任を果たしていない。
④ 同業他社から、諸会費として預かっているお金を自分の遊興費のために使い込んでしまった。(本人口頭で認めている)
⑤ 売上の一部を会社に申請せず、2度にわたり横領した。従業員にも知られてしまっている。(本人いまだ認めておらず。しかし、従業員の証言および発注書が存在する)
上記の理由により、会社を運営していくに当たり、あまりにも支障をきたすため、また、いくら家族とはいえ、特に④、⑤に関しては従業員にも知られてしまっている以上、会社として責任ある処置を取らなければならないと考えています。
質問:
一、解雇する際に、同業他社から預かっているお金、および横領した売上金を返して貰いたいが、会社を去り、上記の金額を返して貰う事で、会社としては本人に対して訴訟等の訴えはしないということにしたいのですが、どういう手続きを行うのがベストでしょうか。
二、本人が代表取締役として会社を運営していたときに、本人の了解の下、退職金積立金を解約し、会社の資本金に増資しました。(国の法律改正で、株式会社の資本金額が変更されたため) 退職金は会社としての退職金積み立てではなく、給料の一部を、中小企業経営者対象向けの個人としての退職金積み立てをしていました。この際、会社として、退職金を支払う義務、もしくは本人が増資した金額を返金する義務はあるのでしょうか。
三、過去6ヶ月、2月を除き、会社から本人に対して給料を支払っていません。売上が伴わず、役員である父には給料が支給できる状態ではありませんでした。もちろん現在経営者となった母も同様です。すなわち、給料未払い分として過去六ヶ月分の給料を法律的には支払う義務はあるのでしょうか。
以上です。なにとぞよろしくお願い致します。
回答
まず、質問項目に入る前に、取締役を解任する場合は株主総会で決議しなければなりませんが、過半数の株式の所有者(委任状出席も可)の出席の元で2/3以上の承認による特別決議が必要です。その点で資本関係はいかがなのでしょうか。
その問題がクリアーされるという前提でまず質問の三から解答します。お父さんは役員ですから通常の従業員とは違いますので、労働基準法の対象にはなりません。つまり仕事従事の実態で報酬を支払うのではなく会社との委任契約に基づく報酬の支払となりますので、取締役会の決議により報酬を減額したり、支払停止もありえます。また過去の報酬額についても遡って返還を議決することもできます。勿論その場合には会社に多大な被害を与えたり会社の信用を失墜させたということを明確にして、それを理由にしたことを明確にしておくことが必要です。
質問の二ですが、役員については定款に特別な定めがある場合を除いて、退職金や賞与などは株主総会の議決が必要です。しかもその原資は未処分利益や利益準備金などです。もしそれがなければ出しようがないということになります。
つまり役員には就業規則や賃金規定はあてはまりません。それらはあくまでも経営者が従業員へ提示した権利・義務に関する文書であって、役員の権利主張の拠り所となるものではありません。したがって経営者年金の様なものに加入していたわけでしょうが、それを本人の了解のもとで解約したのであれば、特に退職金を支払う理由はありません。しかも懲戒免職に等しい状態ですから退職金を考える必要もありません。
本人の増資分も含めた資本金についてですが、本人が役員を解任されても株主という地位は残ります。そのことが今後の運営に支障がないのであればそのままにしておいてもかまいません。
ただし株式の譲渡制限が定款上明記されていると思うのですが、もし譲渡制限が定められていない場合は、株式を勝手に第三者に譲渡することが可能です。一般には厳しい会社の株式を買う人はいないでしょうが、暴力団のようなところに譲渡することも考えられます。もし譲渡制限が定められていない場合は本人所有株式以外の株式が発行済み株式の2/3以上である場合は、株主総会で特別決議により「株式の譲渡制限」を定款に定める手続をとることができます。しかしその条件が整っていない場合は株式の買取について交渉する必要も出てくると思われます。
買い取り価格は株式の額面価格 (例えば一株5万円など) によるものではなく、正味資本額/発行株式数により計算された額が本来の株式価格です。それを参考に買い取り価格を交渉することになります。
質問の一ですが、そもそも役員を解任できる状況なのか、株式の所有関係を無視しておいてもよいのかの問題によります。もしそれらがクリアーできるのであれば相手に損害額の明細を記したものに「上記金額を・・・・の方法により支払います」という念書をとることになります。しかし訴訟を起こさないという前提のようですが、その前提ではどのような書類を取ろうとあまり拘束力がないことになります。本人所有の不動産又は預貯金があるのであればそれをもって弁済させることぐらいしかありません。
もし役員を解任できないとか、株式の買取の必要がある場合は、未払役員報酬や株式買取価格などの金額と損害額とを相殺するような処理が考えられます。
貴方の質問で重要なハードルは
1. 役員解任に必要な2/3以上の承認が得られる状況があるのか
2. 定款に「株式の譲渡制限」の定めがあるのか、もしくは定款変更のための発行済株式の2/3以上の議決ができる状況があるのか
3. 訴訟を起こすといういわば脅しの手法がとれないのか
もしこれらのハードルが越えられな場合は、本人を説得して自主的な辞任と株式と損害額の相殺の方向にもっていくしかないと思われます。