出資した株式資金や運転資金の返還を求められるか?
相談内容
17年前実兄と2人で会社を興しました。後々の事を考え実兄が、折半でやろうという事で実兄の言う事に全部従いました。資本金500万円ずつで株式会社を、土地代600万円ずつで1200万円の土地を、いろいろかかる経費として680万円、合計1780万円を私が出資致しました。実兄も同じ金額をだしているものと、信じています。退職金、貯金、全部差し出しました。領収書などはもらいませんでした。
実兄を信頼していました。妻からあのお金はどうなっているのか責められ社長である実兄に聞きますと、1円たりとも返すつもりはないと、言われました。その訳は始めた当初はうまくいかず、給料も出ず、私が病気になってしまいました。実家の長男からは辞めないと死んでしまうといわれ、1年後違う会社に就職しました。私が離れてから実兄は細々と1人でやっていました。実兄の言い分は、あの時おまえは俺を見捨てた。だから出資金は返すつもりはない。
でも私は8年後実兄のもとにいき、営業マンとして一生懸命頑張り4年前からは2人しかいない会社にしては利益も大分あります。
今の身分はアルバイトとおなじです。年金もなく保険もありません。法務局、公証人役場にいって取り寄せてみますと、取締役でしたが、知らぬ間に取締役をかってに解任、ぜんぶ自分の家族、妻、子供2人にしていました。(設立1年後)。
役員報酬、配当など1円ももらっていません。はんこもおした覚えもありません。株は妻と自分48株記載されています。
出資金の返還の訴訟をおこそうと思います。かってに役員を変えて罪にはならないのでしようか?(土地代は早く自分1人の名義にしたいらしく600万円振込みがありました。平成4年8月)よいアドバイスよろしくお願いいたします。
回答
貴方の相談内容を整理すると
①会社設立時に出資した株式資金や運転資金の返還を求められるのか
②取締役を勝手に解任したり、株主に無断で他の者を役員にできるのか
ということだと思います。
① まず、株式資金についてですが、株式会社を設立する際、株式申込書や株式払込証明書などを用意する必要がありますので、貴方が実際に1000万円の資本金の半額である500万円を出資したのであれば、当然に設立手続の際の書類に残っているはずです。もし、そのことが証明されれば、株式については現在の資本換算で会社に対して買い取り請求することはできます。
ただし、現在の資本の部 (資本金額+法定準備金+繰越利益などの剰余金)が当初の1000万円よりも少なくなっていることもありますし、極端な場合マイナスになっていることもあります。その場合、500万円は全額は返ってこないし、マイナスの場合は価値0円となり、全く返ってきません。逆に会社に買い取り請求をせずに、そのまま株式を持っていて、将来利益が蓄積されて、資本の部が一定の額になるのを待ってから、買い取り請求をした方がよいこともあります。
運転資金の出資については経理上、会社が貴方からの借入として処理されるのが普通です。会計処理が正常で、貴方に返済していないとすれば借入残高が帳簿に残っているはずです。貴方は会社との関係が継続してあるわけですから、この点では時効は成立しません。問題は貴方が確かに680万円を会社の口座に入金したという証拠と返済を受けていないという証拠が必要です。
ただ、会計帳簿の記載が問題です。もし、経理がいい加減な場合、裁判所がそのことをどうみるかもポイントになります。
② 次は取締役についてです。取締役の任期は通常二年ですが、設立の場合だけ一年後に任期切れとなります。その場合、定時株主総会で新たに取締役を選任することになります。貴方が言われるように、貴方が50%の株主であったとするならば、貴方の賛成なしには選任できません。しかし、その際の株主総会議事録には新たに選任された取締役の印鑑で足りますので、任期切れによって新たに選任する役員に貴方が含まれていなかったという体裁で手続をしている可能性が高いと思われます(役員は株主である必要はありません)。従って実際に開いてもいない株主総会の無効を主張することになります。
しかし、10年以上も前のことになりますので時効の問題が出てきます。ただし、株式会社は二年毎に取締役の選任登記が必要ですから、時効とならない最近の定時株主総会の議事録で、株主である貴方をどう処理しているかが問題となります。これは裁判にでもなれば、登記の際、法務局に保管されている定時株主総会議事録が証拠採用されることになります。それによって議事録への不実記載などを株主として追及することになります。その株主総会に参加していないことの証明が必要になります。もし不実記載が証明されれば、①の問題解決にも有利に働くと思います。
ただ心配なのは、会社設立の際、兄にまかせっきりだったということですから、貴方の説明のように貴方が50%の株主とされているのかが疑われます。金は出したが、株主としてではなく単なる贈与行為として処理されているかも知れません(贈与税では時効が成立しています)。運転資金についても同じような処理がされているかも知れません。
従って、先ずお兄さんに、返すつもりがあるかどうかは別にして株式出資や運転資金を出したことの事実を書面的に認めさせることです。その事実を確認した上であれば、あとは会社内部の会計処理や登記の際の文書的な処理の問題となり、証拠によって裁判所が判断することになります。
回答を送信後に相談者から以下のメールが届きました。
早い回答、有難う御座いました。市役所の無料弁護士相談にいき、ぼろくそに言われとても落ち込みました。
涙が出るほど嬉しく、これからどんな結果がでようと、頑張ろうと思います。
本当に有難うございました。