「一括信託支払」「一括ファクタリング支払」の違いは?

相談内容

得意先からの支払方法で、「一括信託支払」、「一括ファクタリング支払」、「債務引受決済サービス」といったものが最近増えてきています。 これらの仕組みの違いについて良く分からないので、教えていただけませんでしょうか。 出来れば、納入企業側から見た、それぞれのメリット・デメリット(リスク)を教えていただけると助かります。 よろしくお願いいたします。


回答

売掛債権の流動化の観点から近年取り入れられた方式です。
 
「一括信託支払」と「債務引受決済サービス」は同一ですが、「ファクタリグ」とは似ていますが異なります。ただし、「一括信託支払」や「債務引受決済サービス」も信託会社や金融機関によって契約内容が微妙に違いがあるようです。従って一般論で説明させていただきます。
 
①「一括信託支払」又は「債務引受決済サービス」とは、事前に信託会社(金融機関)と支払企業と納入企業の三者で基本契約を締結して行うものです。その上で、従来の手形と同じように、支払日(従来の手形の振出日)と決済日(従来の手形の決済日)が異なりますが、納入企業が申込みをすれば、決済日を待たずに一部または全部を現金化できます。その申し込みの手間を省く方法として「包括申込方式」契約があります。それ以外は「随時申込方式」といいます。
 
②「ファクタリグ」とは、納入企業がファクタリング会社に売掛債権を売却して、早期に現金化するシステムです。支払企業はファクタリング会社に代金を支払うことになります。いわば、売掛債権回収の機能を代理するものです。その際、契約により、支払企業からの回収が不能になった場合に納入企業が負担義務を負う方法とファクタリング会社が負担義務を負う方法があります。
 
従って、
①は、納入企業にとっては従来の受取手形に比べて現金化の時期や規模が流動的にできる利点があります。また不渡り事故の恐れがなくなります。ただし、現金化の手数料については手形の場合の割引額に比べてどうなるかのチェックは必要になります。
 
②は、納入企業が一方的におこなうもので従来の手形の割引と似ています。納入企業にとっては便利ですが、支払企業が倒産などによって支払不能となった場合の負担義務の契約が重要になってきます。
 
 
-----追  伸-----
 
その後、以下の様に追加の質問がありました。
 
早速のご回答、また、丁寧にご説明頂き、誠にありがとうございます。おかげさまで理解を深めることができて助かりました。感謝いたします。ご回答を読みながら、新たに疑問が2点ほどわいてしまいました。誠に恐縮ですが、下記質問についてもご説明頂けますでしょうか。度重なる質問で申し訳ありませんが、何卒よろしくお願いいたします。
 
<質問1>
一括ファクタリングの場合は、納入企業が持つ売掛債権をファクタリング会社に売却するということですので、それはつまり、支払企業が債務者とするとそれに対する債権者はファクタリング会社になるということですよね?それに対して、一括信託の場合はどうなのでしょうか?
債権を「信託」するという言葉がよく理解できないのですが、「信託」とは「譲渡」や「売却」とは意味が異なるのでしょうか?信託をしても債権者は納入企業のまま、という理解でよろしいでしょうか?
 
<質問2>
一括ファクタリングに関するご回答の中に、「納入企業が一方的におこなうもので従来の手形の割引と似ています」、「納入企業にとっては便利ですが(後略)」とありました。ここで言う「一方的におこなう」「納入企業にとっては便利」とは、具体的にはどういう意味なのでしょうか?
 
<質問1への回答>

「信託」とは一定の債権の運用・管理を任せることと理解しています。
一括信託の場合は、納入企業の債権を契約に基づいて管理するということで、早期に現金化したい場合は手数料が大きくなるが、所定の決済期限まで待てば、手数料は低くなるか無料になるかではないかと思います。もちろん信託会社は債務者である支払企業からは契約に基づいて手数料を受け取るでしょうし、運用利益を求めて運用の資金にも利用するでしょう。(もちろん貴方の企業の資金だけでなく多くの企業から信託を受けるわけですから、巨額の資金を運用に活用できることになり、信託会社にとってはそれが魅力になります。つまり、通常、信託資金は、どちらかというと余剰資金が集まってくるものですが、日常の営業資金である運転資金まで信託市場に取り込もうという意図によるものだと思います)
 
<質問2への回答>

ファクタリングとは売掛債権の売却ですから債務者である支払企業の意向に関係なくできるから、(私の理解では支払企業に対しては、支払先の変更、又は手形の第三者への譲渡の通知をするだけでよい)信託の場合の事前の三者による契約と違って「一方的」ということです。
便利といったのは、信託の場合と同じで、決済前に全額でなく、納入企業が資金繰りに必要な額だけ現金化できるなど、債権の流動化という意味ではやはり便利です。また、契約によっては支払企業が支払不能になった場合のリスクを回避出来る場合には便利ということになります。
 
以上です。さらに不明の点がありましたらお願いします。