勝手に会社の代表者になり役員も勝手にきめている、どうすればよいか?
相談内容
私の妻の両親が創業した出版社の事例です。
現在、40年ほど前に入社した人物Aが社長に登りつめて経営中です。専務である義母(義父は死亡)を脅すような経営で、人事、会計などをすべて牛耳っています。過去、株主総会を一度も開くことなく現在に至っています。
株主総会の承認を得ずに代表取締役の立場に居座り続けています。他の取締役は代表の言いなりです。株主未承認の取締役が、役員報酬を得続けていることは法律的な問題として、どうなるのでしょうか?
ちなみに取締役会設置企業です。役員報酬額など秘密にされていますが、株主総会未承認の取締役が、役員報酬を得るのは詐欺罪に等しいと思うのですが…。
また、A代表は自分の妻Bを役員とし(何ら仕事はしていません)、役員報酬を得ています。過去、AはB名義の銀行口座に、違法な手段で作った会社の資金をプールし、そこから義父の退職金を支払ったいきさつがあります。義母がAに頭が上がらなくなったのは、こんな事情もあります。
実は、私の妻が、これも名前ばかりの監査役となり、昨年、はじめて自分で決算書に言われるままに署名捺印しました。それまでは、A代表が勝手に決算書を仕上げていました。要は、監査役の署名捺印の偽造です。ちなみに、妻の監査役就任も、株主総会の承認を得ていません。
株主総会が一度も開かれず、私も白紙委任状など出したこともありません。にもかかわらず、株主総会が無事に終了したということで、毎年、会社内外に報告がされています。
このような場合、有印私文書偽造などの罪にA代表以下、取締役全員を問うた場合、勝算はあるでしょうか?
さらに、代表は自分のマンション購入のため、義母を脅すようにして、会社から資金を借り出している節があります。返済はしているようですが、法的な問題があると思いますので、この点も教えていただければ幸いです。
回答
まず、ご質問の要旨を
①株主総会を召集しない場合、どのような対抗策があるか、また過去の株主総会についての対処はどうすればよいか
②株主総会の決議を得ずに代表取締役や取締役を選任することは可能か
③勝手に役員に就任させられていた場合 「有印私文書偽造罪」が問えるかどうか
④代表取締役が会社から機関決定を経ずに借入などした場合は違法ではないか
と整理させていただきます。
尚、「違法な手段で作った会社の資金をプールし、そこから義父の退職金を支払った」件については、詳細が分からないので、 ここでは、コメントしません。
文脈上、あなたの奥さんのご両親が最大株主と理解しましたので、それを前提とさせていただきます。
①について、
少数株主の総会招集請求権(会社法297 条)を使って、株主総会を招集させるという手があります。
公開会社でない株式会社(非公開会社)において経営権につき争い等がある場合には、総株主の議決権の100 分の3 以上の議決権を有する株主が、株主総会の目的である事項(議題)たとえば「取締役選任の件」及び招集の理由を示して、株主総会の招集を請求し、代表取締役が請求に応じて株主総会を招集しない場合には、裁判所に株主総会招集許可申立をなし、裁判所の招集許可に基づき少数株主が株主総会を招集する手続することができます。
過去の総会について、招集がなかった、または、議事録を捏造したと疑われる場合は、招集書類や議事録の開示を求めてください。もし、争いになった場合の重要な証拠となります。
②について、
代表取締役の選任は、取締役会の決議事項です。取締役会が開かれてそこで選任されたのであれば、問題はありません。
ただし、取締役会の選任は株主総会の決議事項ですので、株主総会が開かれていないのであれば、取締役選任については、無効を主張できるでしょう。また、現在の代表取締役がそれらの取締役に選任されているのであれば、それもまた、無効を主張できます。
株式会社の場合会社法成立以前は、取締役の任期は2年でしたが、重任登記がされているのかどうか。それがされているのであれば、株主総会の決議がされているのかどうか。
それが偽造されているのであれば下の③に書いたような問題があります。(ただし会社法では、取締役の任期を最大10年とすることができますが。)
③について、
監査役の選任は株主総会決議事項です。
実際には総会が開催されていないのに、開催したように装って議事録を捏造した場合、あなたが考えているように、有印私文書偽造(刑法159条)が考えられます。
また、捏造された議事録によって監査役の選任登記などを行っていれば、公正証書原本不実記載罪(刑法157条)も考えられます。
④について、
取締役会などの必要な決議を経ずに行った処分が会社に損害を与えていると判断された場合は、株主として株主総会で取締役の解任を求めるべきです。
代表取締役は取締役から選任されますので、取締役を解任されれば、代表取締役を解任することと同じことになります。
金融機関からの借入利息と同程度の利息をつけて返済してもらっていれば問題ありませんが、利息がついていなければ、会社が受け取るべき収益を計上していないとして、税務署から課税される可能性はあります。
いろいろと、法律的に問題のある会社のようですが、重要なのはあなたや奥さん、奥さんのご両親が、何を望んで、どこを落としどころにするかだと思います。
会社が、A社長の下、健全に利益を出しているのであれば、株主として、適正な配当を請求するということなのか、
A社長及び取締役を解任し、経営権を取り戻したいのか、
株主として単純に法を遵守させたいのか。
その部分を整理してから行動されるといいと思います。
以上です