会社が倒産しそうなので役員を辞任し退職した場合損害賠償責任はついてくるのでしょうか?
相談内容
損害賠償を受けない役員辞任方法についてご質問です。
現在、社員20名程度の未上場企業の取締役(財務)をしています。会社は設立数年目で赤字、キャッシュ残もあと少しで、今月末に倒産しそうです。
役員は社長、私が常勤で、あと2名は非常勤の計4名。社長が営業面、私が経理と管理面を担当しています。私が辞めても役員数に欠員が出るわけではないのですが、赤字で倒産寸前の状態では、会社に不利な時期であり、また私が辞めると経理面でも実務が回らなくなってしまいます。
取引先一部に支払遅延があり、社会保険も数ヶ月未払い、所得税も同じです。
今、第三者割当増資の検討をしていますが、これが失敗した場合、倒産です。役員報酬も高くは無く、数ヶ月払われていません。
自分の生活も危ういので、辞任を考えています。増資が成功して辞任が一番ですが、増資の確度は薄い状況です。倒産して再就職でもしない限り、生活が出来ません。
しかし、倒産すると、未払の所得税等は役員に請求されるものだったと思いますので、私と社長の借金になると思われます。
会社の借り入れやリースの連帯保証は社長ですので、私は一切関係がありません。
役員が辞任出来るのは、やむを得ない事由がある時というのもあるのですが、
この状況を打破出来るアドバイス等を頂けたらと思っております。ご教示の程、宜しくお願い致します。
回答
あなたからのご相談を整理すると
会社の状況が厳しく、支払期限の到来している債務があるばかりか、役員報酬も支払われない状況のため、辞任して、他の会社に就職したい。しかし、経理を担当している私が辞任すれば、会社の実務がまわらなくなる。
そのため、
・「『会社の不利な時期』にあたり、辞めることはできない、または辞めれば損害賠償請求を受けるのではないか」と考えている。
・辞任したとしても、「債務に対する責任を追及されるのではないか」と考えている。この状況で、責任を追及されずに辞めることができないか。
という内容に整理させていただきます。
会社が今月末に倒産しそうです」ということですが、一般的に言われる「倒産」にもいろいろあり、それぞれに違う事態ですので、詳細が分からない今回は、そのことについてコメントいたしません。
まず、辞任できるかどうかについてですが、「会社に不利な状況」かどうかは、受理する局面では会社が判断することです。辞任の意向があるのであれば、まずは伝えることではないでしょうか(口頭でも充分ですが、不安であれば内容証明で)。
そもそも、あなたが会社を辞めて会社に損害を与えるとしたら、経理などの実務の担当者を失うということにあるわけで、あなたが取締役という立場を失うこととは関係ないのではないでしょうか(いただいた文面からの判断ですが)。
取締役を辞任して経理を担当する従業員として残り、その上で、経理の仕事の引継ぎをして辞職するのか、そのまま従業員として居残るのかを考えればいいと思います。
もちろん本当に「今月末で倒産」するのであれば、経理の引継ぎをやるような時間的余裕はないかもしれませんが、会社に損害を与えずに、直ちに取締役としての立場から離れたいのであればこういう方法になると思います。
債権者(取引先や、社会保険事務所、税務署など)への責任については、取締役がその職務執行に悪意または重大な過失があったときには、債権者に対して、会社と連帯して直接責任を負担しなければならないと定めています。
源泉所得税の滞納に関しては、場合によっては取締役責任をとらなければならないことがあります。ただし、あなたが形式的な取締役である場合はそこまでの責任はないと思われます。
取締役の故意又は重大な過失としては、経営状態が悪く、決済の可能性が低いのにも関わらず手形を振出したり、会社に支払う能力がないことを知りながら多量の仕入れを行ったり、軽率な投資などを行って会社に損害を与える、などの場合でしょうか。また、代表取締役がこのようなことを行っていることを知りながら、それを止めなかった場合も責任を追及されることがあります。そのような事実がなければ、あたなが債権者から責任を追及されることはありません。
ご質問についての回答は以上ですが、あなたがもし、形式的な取締役ではなく、経営陣の一員としての取締役であるならば、この「倒産しそう」な状態から、会社をなんとかできないかを考えるのも、取締役の責任だと考えます。増資を申し込んでいるということは、黒字化の目処があるということと理解します。
だとすれば、たとえ増資ができないないとしても、取引先や金融機関といった債権者への説明を重ねて、支払を待ってもらうことや返済条件の変更(所謂リスケジューリング)が可能でないのか、また、それができなくても民事再生などの法的手続き(キャッシュがある程度必要ですが)による再生が可能でないのかなどの検討の上で、会社を立ち直らせる最大限の努力をするのが、ベストな方法でないかと思います。
以上です