会社資金を私的に流用する父親を代表取締役から降ろしたが復活する心配はないのでしょうか?

相談内容
電気工事代行業務を18年前に設立。父が今年12月まで代表取締役であった。(母は取締役)以前から会社のお金を流用していた父を見かねて、母が代表権の変更を希望。(これ以上勝手な会社運営資金の流用および、会社名義での個人遊興用借金をしないため)身内のため法的手続きは取らず、母に代表権を変更する形で双方合意。母を代表取締役に、父を取締役に変更。ほか役員も了承。役員変更を行った。父同席せず。この際、役員間でのなんらかの文面上の合意文書等は作成せず。
 
役員変更は、担当の税理士の方に来ていただき、手続きは済ませました。ただ、元代表取締役の父とは、話し合いの上、また、他役員(父方の親類)には、電話で事情を説明し、了承してもらいました。代表取締役辞任届に印を押しましたが、同意を得たとはいえ、母が捺印をしました。(父に同席を求めましたが、拒否された。)
母の懸念は、いくら口頭上了承したといっても、捺印をしたのは母に変わりなく、のちに父了承した事実を覆さないか心配。電話で税理士の方が手続きに来る際に同席を求めたが「勝手にしろ」といわれ同席して貰えなかった。
同時進行として、離婚協議を行っているが、進むにつれ、父が役員変更を了承していないと言われないか心配。
父親の株式持分は30.2パーセントです。
 
今回、質問
1. 後に訴訟を起こされないためには、役員変更を了承した文面上の証拠が必要だと思われるが、その手順は。
2. 1.を父に拒否された場合、代表権をまた父に戻す事になるかもしれない。そうなった場合に、会社の株、運営資金等を勝手に個人目的で流用されないためにはどのような法的手段をとればいいか。よろしくお願いします。


回答
さてご相談の内容を整理すると
 
1.取締役会に父親の代表取締役辞任の届出が出されたこと
2.辞任は口頭了解であったこと.
3.取締役会で代表取締役辞任により母親が次の代表取締役として選任されたこと
4.その事実により代表取締役の交替の役員変更登記はすんでいること
とまとめさせていただきました。
 
まずご質問の1.の、文書上の証拠の点ですが、変更登記の一式がされたということは文書的にはそろっているから登記がされたわけですので文書的には問題がないはずです。
問題は父親の辞任の意思の確かめ方にあります。しかし裁判となったとしても大変微妙な問題なので判定は困難でしょう。なぜなら夫婦間の問題であるということと、その行為によって母親が大きな利益を得るとは推量されないことにあります。
 
次にご質問の2.の問題は、1.の問題がクリアーされれば父親の代表権の復活は一般的にはありえません。また父親は株式の3割り程度の所持ということですから、他の株主が団結すれば他の取締役を解任したり、定款の変更にかかわる特別決議(2/3の議決権)はできません。
また仮に代表取締役に復活したからといって取締役会議や株主総会の決定に反した行為は背任行為であり、商法上損害賠償責任が本人に及びますし、代表権行使の差止め請求もできます。
 
一般に取締役会議は代表取締役が招集するとなっていますが、取締役の連名で開催を請求できますし、理由なく開催を拒否した場合は、他の取締役が代表取締役の代行として取締役会を開催できます。
 
いずれにしても代表権の復活を阻止するために他の株主や取締役とよく意見を一致させておくべきです。
 
ただ、父親が株式を勝手に他人に譲渡、例えば暴力団とかに、することができるかどうかは定款で株式の譲渡制限がうたわれているかどうかによります。
通常中小企業で株式会社を設立する場合「株式の譲渡制限」をしていることが多いのですが、もししていないのであれば、株主の過半数の出席のもと出席株主の過半数の賛成で、しかも発行済株式(出席株主持分ではないことに注意)の2/3の賛成があれば「株式の譲渡制限」を定款に書き込めますし登記もできます。詳しくはお近くの司法書士にお聞きください。