役員を辞任したいが、会社に株式は買い取らせることができるか?

相談内容

設立して3年の人材派遣の会社(株式会社)になります。資本金の特例制度を使って非常に少ない資本で友人と二人で立ち上げました。出資比率は50%同士で今では資本金を1000万円に引き上げることができました。社長を友人が勤め、私は専務です。
最近、お互いの中がギクシャクしだし余りコミュニケーションも取れていません。私のことを邪険にするわけでは決してないのですが、従業員には話していることも私にはあえて話さないよう態度をとるようになり、報告や連絡がお互い全くと言っていいほど取れていません。大きな溝ができています。
 
経理は社長が完全に握っており、社長がつくってきた売上が多いこともあり、私はなかなか口を出せないような雰囲気になっています。もちろん私もその他の部分で大きく貢献してきたつもりですが。。。
報酬なども社長が裏でコソコソやっており、簿外でかなり蓄えているようです。
私としてコミュニケーション不全が嫌で嫌で辞めたいと思っています。ただ、私が持っている50%の株についてどのようにすればよいのかわからず悩んでいます。
 
今回のような理由で相手に買取請求できるものなのか?、もし相手が買取を拒否してきた場合どうなるのか?何もなしで出て行くのは納得できません。宜しく御教示お願いいたします。
 


回答

貴方の相談内容をまとめると
 
①共同経営者との意思の疎通がてきなくなった
②経営から身を引きたいが株式の買取り請求はできるのか
とまとめさせていただきました。
 
先ず
①について、株式の出資比率は50%対50%ということですから、何も現在の社長が会社の経営権を自由にできる状況とはいえません。極端に言うと貴方が社長になってもよいわけです。その可能性は考えないのでしょうか。株式比率はイーブンですから後は職員がどちらについて来るかによります。その点、じっくり考えてみたらいかがでしょうか。
 
②それでも経営から離れたいのであれば、株式をどうするかとなります。
 
その場合も二つの方向が考えられます。
一つは、そのまま株式を保持し続けて、会社に利益がでれば株式配当の支払を株主総会で主張し、配当を出させる道です。50%を貴方が保持しているのですから、貴方の協力(株主総会に出席すること)や賛成(決算や取締役の選任、増資などにおいて賛成すること)なしには何も決められません。
特に、役員の任期切れになった場合に新たな選任をする時、貴方の協力や賛成がなければ役員の任期切れとなり、登記もできません。
 
もう一つは、どうしても今すぐに株式の買取りを求めたい場合ですが、①のように何を決めるにも貴方の賛成がなければ会社の決算の承認も役員の選任も重要な決定もできません。従ってその全てに反対する姿勢に立てば、相手は株式の買取りに応じざるを得なくなるでしょう。
 
ただし、お金の用意がないからという理由で、一部の株式だけしか買い取らせないような愚はおかしてはなりません。
つまり、現在の社長が過半数の株式を取得したことになれば、特殊決議か必要な(例えば定款の変更など)場合以外は、社長は自由に会社の決定を左右できますので、貴方が何をしても無視されかねません。貴方を取締役から解任(会社法の施行で過半数の株式支配で可能になりました)し、職場からも解雇されかねません。買い取らせるなら全てを一期に買い取らせるべきです。
 
その他に、一般の会社では株式の譲渡制限がかけられていると思うのですが、会社にとって都合の悪い相手へ貴方が株式の譲渡の申し出を会社にした場合に、会社がその譲渡を拒否するならば、改めてその株式の買取り人を指名する必要が出てきます。いずれにしても買取りせざるを得ないことになります。
 
株式の買い取り価格の基準は、現在の自己資本額を発行株式数で割って得られた額となります。従って会社が利益を上げているのであれば、当初の出資額より高く買い取らせることができます。もし赤字が出ているのであれば、安くなる可能性があります。ただし、あくまでも自由売買となりますので上記の計算により算出された額を参考に価格交渉することになりますが、決裂した場合は裁判所に採決を頼むことになりますが、裁判所は特殊事情がない限り、上記の算出方法により得られた額を言い渡すはずです。
 
結論としては、実質的に株式の買取りに応じさせることは可能です。ただ貴方も会社の設立に関与したのでしょうから、この際、その会社から単に去るだけの方法しかないのかもっと考えたらいかがでしょうか。
 
以上です。