元社長が過去の貸付金の返還を求めてきたが応えるべきか?

相談内容

10年前、経営不振のため前代表取締役の後任となり、事業を始めたものの私の個人貸付をしながら細々と株式会社という名目ではありますが、実質一人親方のような経営をしております。
先日、前代取より連絡があり、自分が代取をしていた頃に会社の契約に支払った保証金100万は自分が会社に貸したものであり、その後、その保証金を契約した相手方から会社へ返金があったのだから返済してくれとの連絡がありました。
 
内容としては最もなのですが、自分が平社員の頃の話であり、代取の変更時にはその件については「問題ない」ということでしたのに、今現在は言った言わないの話となっております。会社として利益が上がっているならまだしも、支払える状況ではありません。
 
株に関しては、前代取のほうが過半数以上持っておりますので、自分としては会社に執着はないので、何かいいお知恵はないかと相談いたしました。
自分に分がないかもしれないという気もしますが、よろしくお願いいたします。


回答

社長からの借入について書面などで明確にしないまま引き継いだのは、確かに良いことではなかったと思います。元社長にそのつもりがあれば、債権放棄というかたちで清算することもできたはずなのに、それをせずにあなたに引き継いだのは、将来請求できる余地を残しておこうという気持ちがあったのかもしれません。
 
文面から判断できる範囲での回答となることを最初にお断りした上で、以下のように回答させていただきます。
 
まず、元社長への返済について「内容としては最も」と書かれていますが、そのことに疑問を感じます。もちろん一般的に債務は弁済しなければなりませんが、保証金を社長のポケットマネーに頼らなければならなかった責任は誰にあるのでしょうか?
 
前社長が保証金のための100万円を会社に貸し付けたときに、どの程度の役員報酬をとっていたのかを過去の帳簿などが残っていれば確認してみてください。もし会社の状況が赤字であったり、債務超過であったりと、あまり良くないのにも関わらず、それに見合わないほどの役員報酬をとっていれば、元社長の貸付金に頼らなければならなかった責任が元社長本人にあったことの証拠です。そのような事実があれば、「元社長が無理な経営の結果作った借金」ということになり、法的な争いになった場合でも、辞任後とはいえ取締役責任のある元社長にとっては不利になるでしょう。
 
また、そのような事実に頼らなくとも、そもそも保証金が戻ってきたのならば、何故その時に会社から返済してもらわなかったのでしょうか。それは、その当時に別の支払などで資金繰りが元社長自身できなかったからではないでしょうか。資金繰りをやるのも社長の責任です。それができないような状況に陥ったから、経営者を交代したのではないのでしょうか。そのように話してみてはいかがでしょう。
 
逆に「あなたが経営者の時につくったものだから、けじめとして債権放棄してください」というくらいの強気でいいように思います。
 
もしそれが通じないようなら、「借金を作った責任の所在を考えると、事業の継続に必要な取引先への支払より優先すべきものでない。もし無理を通すのなら、事業の継続が困難なので、最大株主として会社を清算するか、代表取締役を辞任させてくれ」と迫ってみてはいかがでしょうか。
 
話し合いがうまくいかなくても、弁護士費用や裁判所に支払う裁判費用のことを考えると、おそらく100万円程度の争いで裁判沙汰になる可能性は少ないと思います。また、上記の理由から相手に分があるとは思えません。相手がとってくる手段として考えられるのは、支払督促と差し押さえです。その場合、まず内容証明郵便などで請求してくるはずです。
 
内容証明などによる請求が来た場合は、以上のような理由で払えない旨を相手の要求する期限か2週間以内に内容証明郵便で通知するとよいのではないでしょうか。
 
以上です


その後相談者から下記のお礼の言葉が届きました。
 
こんにちわ。
丁寧で詳細のわかりやすい回答大変ありがとうございます。
「証拠」社会の中で、その時の感情や温情のみで引き継いだ自分にも責任あると思い、悩んでおりましたが、先生のお言葉で、自分の免罪符がいただけたような気がします。
それを踏まえたうえでの解決に導きたく思います。
略儀ではありますが、文面上にてお礼申し上げます。ありがとうございました。取り急ぎお礼まで