会社にとっての重要な投資や取引を代表取締役が独断で決定できるのか?
相談内容
年間売上:3億円・20人程度の中小企業です。25年前に父が他界し、母・兄・私の3人が株を約3分の1ずつ相続して再スタートすることとなりました。当時は母が代表取締役としてスタートしましたが、10年ほど経過して体調を崩し、兄に代表取締役を譲り、母と私が代表権のない取締役となりました。取締役会を設置せず、株主総会も実質上開催したことがありません。
母は体調を崩したため、ほとんど出社しなくなりましたが、その頃から兄の専横が目立ち、重要な投資(土地購入)や外国企業との取引等において独断で決定し、事後報告のような形での通告をする、という状態でした。その後自分の役員報酬を当社ほどの会社規模にもかかわらず、ひとりで年収3千万円ほどの報酬を得るようになり、母や私は何も知らされていませんでした(私は約1千万円弱・母は5百万円)。昨年そのことが発覚し、母が改善要求したにもかかわらず全く無視しています。
また、その後に後継者ということで自分の息子(30歳)を入社させ、5ヶ月後に勝手に取締役に選任し、登記をしていることが最近発覚しました。同時に自分の息子に役員報酬ということで、年収換算で約1千万円の報酬も独断で決めています。(兄と息子を合算すると約4千万円の役員報酬を得ています) 一方、株式を息子に移転するため、母の持ち株を生前贈与するように迫り、母は私の立場を考え断り続けているため、母と兄の折り合いも悪くなっています。
そこで質問ですが、
1.会社にとっての重要な投資や取引を代表取締役が独断で決定できるのでしょうか?
2.兄の息子を勝手に取締役に選任し、登記することができるのでしょうか?これは違法行為ではないでしょうか?母も私も書類等に承諾の捺印をしたわけではなく、株主総会を開催して承認したこともありません。むしろ半年前に勝手に登記を済ませていたことを、顧問税理士が母に口を滑らせたようで、顧問税理士が代行して法務局へ登記にいったそうです。(私の憶測では、背後には顧問税理士の画策があったように思います)
3.役員報酬を代表取締役の裁量で決定できるのでしょうか?
4.以上のような兄の専横を阻止する法的手段はあるでしょうか?(母や私が何度も警告しましたが、全く無視される状況です)
以上、よろしくお願いします。
回答
さて、貴方の相談についてお答えします。
1.会社にとっての重要な投資や取引を代表取締役が独断で決定できるのでしょうか?
「投資や取引」について、それに重要性が有る、無しに係らず、経営方針は取締役会や株主総会で事前承認又は事後承認が必要になります。
御社は取締役会がないということですから、株主総会が最終決定機関となります。各自の持ち株数が33%とずつということですから、一般論で言えば貴方と母親が組めば、経営方針の修正はもとより、代表取締役の解任、取締役の解任が可能です。
顧問税理士の方はその辺の状況を「心配して」環境の変更を求めているのでしょう。
2.兄の息子を勝手に取締役に選任し、登記することができるのでしょうか?これは違法行為ではないでしょうか?母も私も書類等に承諾の捺印をしたわけではなく、株主総会を開催して承認したこともありません。むしろ半年前に勝手に登記を済ませていたことを、顧問税理士が母に口を滑らせたようで、顧問税理士が代行して法務局へ登記にいったそうです。(私の憶測では、背後には顧問税理士の画策があったように思います)
取締役の選任には、議決権の過半数の参加の元、その過半数の議決で決定されます。お兄さんだけで株主総会の開催は過半数に満たないので開催は不可能ですから、何らかの細工がされたのでしょう。法的には違法な処理がされたものだと思います。
また、株主総会は一般(定款で別途決めている場合はそれによる)に開催日の二週間前までに、開催日時、場所、議題を議決権のある株主に知らせなければならないとなっています。その通知がないのであれば、株主総会の開催そのものが違法となります。
3.役員報酬を代表取締役の裁量で決定できるのでしょうか?
これも。(御社は取締役会がないので)株主総会で決定することになっています。
4.以上のような兄の専横を阻止する法的手段はあるでしょうか?(母や私が何度も警告しましたが、全く無視される状況です)
もちろん会社法違反ということで訴訟は可能です。弁護士と相談してください。以上
以上の回答はあくまでも会社法に基づくものであり、各自の会社への貢献とか役割については一切考慮しないものです。従って、現状で代表取締役や息子氏を解任した場合に会社の経営の継続が可能なのかなどを良く判断しないと、単に法を盾に混乱をもたらしただけとなれば、従業員や取引先に迷惑がかかるだけということも考えられます。慎重に対応してください。
余談ながら、御社の様に事業承継時によく準備されていないとこのような混乱が発生しやすいことになり、当社などはそのために「事業承継前の様々な準備」について相談にのっております。