直の元請から裏書なしの他社の手形をもらったが不渡りになった、直の元請に請求できますか?
相談内容
不渡及び残金回収方法を教えてください。
元請(株)N社・下請け個人会社U・(M氏)、U・M氏より工事契約完了後現金契約¥1,350,000-を結びました。
U・M氏の都合により現金¥500、000-・N社手形¥500,000-・「U系列個人会社S・(I氏)裏書」。残金¥350,000-。
ところが(株)N社手形¥500,000-不渡になりました。N社代表及びS・(I氏)所在不明。個人会社U・(M氏)、住所所在解っています。M氏より不渡及び残金回収方法を教えてください。M氏を差し押さえできますでしょうか?M氏の裏書はありません。契約書有ります。どの様にすれば良いでしょうか?
よろしくお願いします。
回答
要約すると、貴方の直接の元請会社と1,350,000円の工事契約した代金について、
①、廻し手形として受け取った500,000円が不渡りになったこと。
②、その手形には領収相手の裏書がされていなかったこと。
について直接の元請(領収相手)に対して請求できるか、
要するに約束手形に裏書をしていないで受け取った場合にその決済をもってM氏が債務者としての義務が完了するか
ということだとまとめました。
先ず、手形で決済をする場合に相手側に裏書をさせなかったのは大変な不注意です、と言いたい。
そのことはさておき、そもそも手形は、会計上は手形の受け渡しをもって債権・債務の完了としますが、民法上は決済日に決済されたことをもって支払の義務の完了ということになりますから、最終的に決済がされなかったということは、遡って当該手形による債務の支払は初めからなかったこととされます。従って貴方は直接の元請であるM氏に対して、手形法に基づく請求権ではなく、工事代金の未払金についての請求権を行使することになります。
ただし、M氏が貴方にN社発行の手形で工事代金の決済をしたことの証明が必要となります。相手がN社発行の手形以外で決済したと言い張る場合に、そうでなくN社発行の当該手形であったと証明できるかどうかです。なぜならその手形にはM氏の痕跡はないからです。そこがポイントになります。
例えば領収書とその控えにN社の何年何月何日付の手形による決済と記入されているとか、相手側が何らかのかたちでその事実を認めるとか(内容証明郵便で事実を告げ、相手が否定しなければ認めたことと同じになる)などの脇を固めることが必要になります。
もう一点気になるのは、なぜM氏が裏書をせず、系列のS・Iが裏書したのかです。もしかするとM氏はN社が不渡りを出すことを知っていて、取引がなく、しかも支払能力のないS・Iにわざわざ裏書させたとすれば詐欺行為になます。
いずれにしてもすぐに、M氏に対して 「M氏が工事代金の決済に使ったN社発行の何年何月何日付の500,000円の手形が不渡りとなったため、工事代金の一部が未決済状態になったので、未払工事代金の全額850,000円を速やかに支払うよう求める」 という内容の内容証明を発送し、同時に支払督促の手続を始めてください。
支払督促は以前の支払命令の請求とほぼ同じものです。
貴方が支払督促を簡易裁判所を通して相手側に送達してから二週間以内に相手側から異議の申立てがない場合は確定判決と同じ意味をもち、相手側財産に対して差し押さえの執行の権利が生まれます。
ただし、相手側が異議の申立てをした場合は裁判になります。裁判となった場合、当事者が弁論に立ってもよいのですが、一般に弁護士を依頼するため裁判費用と訴訟物の大きさの比較で考えるしかありません。仮に勝訴しても弁護士費用まで相手方の負担とはならないからです。
支払督促は簡易裁判所に対して提出します。手続費用は争いとなる金額によって変化します。また相手側に送達するための切手を貼った封筒なども必要となります。直接簡易裁判所の窓口で相談してみてください。
支払督促の書式について添付(相談者本人宛)しました。参考にしてください。