就業規則で退社後の競業他社への就職を制限しているが、よいのでしょうか?

相談内容

先日は相談の回答(No.74)有難うございます。
質問の内容で就業規則の事に関して同業の転職範囲には触れましたが再確認しましたら、『社員は退職後1年経過するまでの間は会社と同一種類又は類似する種類の事業であって且つ、会社の本社・営業所から半径10キロ以内に所在する他社において営業行為を行う等、競合する業務に従事したり、また自己の名による営利を目的とする業務に従事してはなりません。』とありました。
 
今後半年内には具体的に検討し、現社員と会社設立に向けて話し合いをしようと思っております。
やはり争いを含め弁護士等に相談し覚悟したほうが良いのでしょうか?


回答

先日いただいた、文面では、期限についての具体的記述がないため、「期限がない」として無効の可能性があると書きました。今回のメールで詳細を見る限り、前回書いたように「あまりにも広範」ということにならない可能性があるようです。
 
そもそも、このような規定は、会社が持つ営業に関わる秘密を他社に漏らされることによって、大きな損害を被ることを回避するために設けています。判例では、「必要最小限で合理的なものなら有効」としています。
しかし、社員にも職業選択の自由がありますので、裁判になった時には必要最小限で合理的かどうかについての争いになっています。
 
有効性についての明確な基準はなく、ケース・バイ・ケースのようですが、
具体的には
・競業避止の期間や地域、職種の範囲
・使用者の利益と労働者の不利益とのバランス
・社会的利害(独占集中のおそれとそれに伴う一般消費者の利益)
といったことを総合的に判断するようです。
 
昭和45年の判例では
「①雇傭契約存続中、終了後を問わず、業務上知り得た秘密を他に漏洩しないこと、②雇傭契約終了後満2年間X(退職前の会社)と競業関係にある一切の企業に直接にも、間接にも関係しないこと」という規定を有効とした判例があります。
判旨では、2年間を「比較的短期間」とし、該当する社員に対し機密保持手当を支給していたということあり、「合理的な範囲を超えているとは言い難く」、「本件契約はいまだ無効と言うことはできない」としています。
 
断言はできませんが、様々な判例を見る限り、今回の会社の規定が期間的・地理的縛りが「合理的な範囲を超えている」という判断にならないのではないかという気がします。
 
裁判を起こすとしたら、今までいた会社側からでしょうから、争いを覚悟するかどうかは、あなたがこれから設立する会社が、どの程度今までの会社に損害を与えるかよると思いますが、あなたが退職して同業の会社を設立し、社員を引き抜いて、顧客も奪うことで感情的な軋轢が生まれるのであれば、損害を与えるかどうかによらずに争いになる可能性は当然でてきます。
 
設立間もない会社に法律的な争いは、新規顧客の獲得上も、従業員のモチベーション上も避けるべきでしょう。
争いにならない方法で会社を運営するためにも弁護士への相談がベストかもしれません。
以上です