カテゴリー別アーカイブ: 過去のメール相談

会社の役員不在状態の場合会社法351条は適用されるか?

相談内容

豪外資系の会社です。代表取締役が不在となり半年が経ちます。
登記上の役員は二人代表と監査役一人の計3名で全て海外国籍です。
但し代表の一人は海外におり3年以上日本に来ていません。監査役に至っては一度も来日がありません。
唯一の代表も去年末に結婚退社し、海外で移住しました。残ったのは正社員4人とパート1人になります。
 
豪の代表の一人は事実上引退し委任されているグループCEOに後任者を決めるよう何度も求めましたが、全く進めるつもりは無いような返答で半年が過ぎてしまいました。 しかし会社運営上、新規契約や家賃の更新など何をするのもままならない状態です。
このCEOは勿論、登記に含まれておりませんし、CEO自身も法的責任が無い事を知ってか、それを理由にあらゆる決済に対して承認しません。
残った我々社員は経営責任もありませんので退職しても構わないのですが、だからといって放り投げるのも取引会社に対し申し訳がないというのと、職を失ってしまう他の社員のためにもできれば存続したいと思っています。
 
こういった場合、会社法351条の代表取締役代行の選任は適用されるのでしょうか。
申し立ては利害者とありますが残存の社員ではできないのでしょうか。
法的な決済ができる状態になれば運営に支障なく継続の可能性もありますが、このまま社員達が不安を抱えながら業務を続けるのには限界があります。 どうか良い方法はないものでしょうか。
以上不十分な説明ですが宜しくお願い致します。


回答

貴方の説明の状況であればまさに会社法351条第2項が適用されるケースです。急いで裁判所に申し立ててください。特に弁護士を雇う必要はないと考えます。
 
会社にある賃金台帳や雇用保険等の証書等で会社の社員であることや、役員達の言動を証明するものなどがあればそれらを証拠として持参するとよいと思います。後は裁判所の指示に従ってください。
それから事前に社員間で話し合って社員代表を決めておくとよいでしょう。
 
会社法
第三百五十一条 代表取締役が欠けた場合又は定款で定めた代表取締役の員数が欠けた場合には、任期の満了又は辞任により退任した代表取締役は、新たに選定された代表取締役(次項の一時代表取締役の職務を行うべき者を含む。)が就任するまで、なお代表取締役としての権利義務を有する。
2 前項に規定する場合において、裁判所は、必要があると認めるときは、利害関係人の申立てにより、一時代表取締役の職務を行うべき者を選任することができる。
3 裁判所は、前項の一時代表取締役の職務を行うべき者を選任した場合には、株式会社がその者に対して支払う報酬の額を定めることができる。
 
以上です。

社長がワンマンで独走しているが、どうすればよいか?

相談内容

創業者であり圧倒的な株を所有している社長が経営能力及び姿勢上問題があります。社長以外で5名の取締役がいますが役員会議でも他の役員の意見が大勢を締めていても自分の会社だと言い独断で物事を決めてしまいます。
 
業績不振で社員10%程度、役員は20~30%の給与削減をしましたが、社長自身は10%しか削減していないことがわかりました。
非常事態だという認識で社員及び役員は懸命に努力しているにも関らず社長自身は週に平均2~3回は私的ゴルフで不在です。社長の姿勢を正す有効な手段はないでしょうか。


回答

代表取締役が独走するという相談ですね。
取締役会で他の役員と同調できるのであれば、代表取締役を解任することは可能ですが、取締役の解任・選任は会社法的には株式数の問題ですから、最終的には社長が他の役員を解任することが可能ですから、結局は「圧倒的な株を所有している」社長が支配権を持っていることになります。
 
解決の道は、「非常事態だという認識で社員及び役員は懸命に努力している」ということで、全員の気持ちを一つにできるのであれば、全員退職の覚悟で社長を諭すか、全員退職して、そのメンバーで新たな会社を作るかです。
社長の立場が「裸の王様」であることを自覚させることです。社長だけで会社運営ができるわけではないことを自覚させることです。
 
以上です。

会社の名目代表として勝手に解任されようとしている

相談内容

はじめまして、私はÅ社の代表取締役をしております。俗に言う雇われ社長です。ある上場会社から外れるにあたり、その会社の社長に就任しましたが、B社(ジャスダック市場)のC会長に名前だけ貸してくれ、資金繰りはこちらで全てすると騙され、付き合いの関係からも応諾しました。
 
しかし、実際には役員報酬は、業績が悪いとの理由で、6ヶ月で80万弱しか払われず、資金がキャッシュアウトするとなると、個人名義で貸付を無理強いをさせられ、現在は200万程の残高が残っております。
 
出金や預金管理等の事務関係は、関連の事務代行業者に業務委託をしており、資金関係はCの指示にて全て動かされています。
ここ10月に来て、昨年9月に閉店した店舗の保証金の返還金が600万程、入ると判ると「もうおまえは必要ない」「去ってくれ」と怒鳴られ、代表を辞任させられる動きになっております。9月、10月は報酬は0で動いている状況です。
 
CはA社の役員には入っておりません、Aの持ち株会社として、株式会社Sがありますが(100%A株式保有)、休眠会社で、すべて私個人が100%株式を保有しております。
このような場合、どのような対抗要件があるのか、ご教授願いませんでしょうか?非常に複雑な事案ですので、どこに相談をしてよいのか、わかりません。何卒宜しくお願い致します。


回答

回答の前提として、「Aの持ち株会社として、株式会社Sがありますが(100%A株式保有)、休眠会社で、すべて私個人が100%株式を保有しております。」という部分を、貴方が持株会社Sの株式の100%を保有しているということと理解します。
 
そうすると、どのような事情かは別にして、貴方がS社の株式の100%を保有し、しかもS社がA社の株式を100%保有していること、しかも貴方がA社の代表取締役であるということは、
 
① 貴方は、自分で辞任しない限り誰も貴方を解任できません。代表者に留まって以下のことをすべきです。
 
② A社の事業及び資産の管理に関しては貴方に権利があります。「出金や預金管理等の事務関係は、関連の事務代行業者に業務委託をしており」となっていますが、貴方の指示ですぐにその関係を解消して、貴方の管理下におくべきです。
 
③ 店舗の保証金を、元々誰が負担したのかに関係なく、その返還がA社に対して行われるのでしょうから、貴方がその管理をする権利があります。
 
④ 貸付金や役員報酬については、貴方の判断で貴方に返済、若しくは支払をすればよいことです。(もちろん資金的裏づけがあることが前提ですが)
 
ただし、C会長は簡単には資金管理の権限を貴方に渡さないでしょう。しかしA社名義の預貯金や事業における資産負債の管理をA社代表者の知らない中で行うのは違法です。きっと代表印も無断使用していることでしょう。
したがって正常な関係に戻すべく交渉し、交渉が不調の場合は訴訟することになると思います。その場合は速やかに弁護士に相談してください。
相談に行くときには、今回の事情の経緯を時系列的に整理したものと、各関係会社の登記簿謄本(登記事項証明書)をそろえて関係図にまとめると相談がし易いと思います。
 
ところで、最初に回答の前提と断わった部分が違っていて、S社がA社を支配しC会長がS社を実質的に支配している場合は休眠かどうかに係わらず話が変わってきます。その場合は貴方の立場はただ利用されただけとなります。
しかし、その場合でも、貴方をA社の代表取締役にした経緯や貸付をさせた経緯がC会長の悪意(詐欺又は脅迫等)によるものであることが証明される場合には、刑事告訴と貸付金の返還を求める民事訴訟の可能性もあるでしょう。この場合も速やかに弁護士に相談することです。
 
文面からは以上の回答となります。
以上です。

上場廃止になると一括支払信託方式はできなくなるのか?

相談内容

お教え頂きたくよろしくお願い致します。
D社という音響機器メーカーとお取引(原材料等納入)をしておりますが、昨年12月にTBOにより海外ファンド会社の子会社となり上場廃止したため「一括支払信託方式」は継続できなくなった為、支払い条件(入金サイト)を変更したいの案内が来ました。
 
そこで質問なのですが、上場廃止になると(破綻を除く)一括支払信託方式はできなくなるものなのでしょうか?
それとも親会社がファンド会社なので不必要?なのでしょうか?
幼稚な質問なのかもしれませんが宜しくお願い申し上げます。


回答

一括支払信託方式(いわゆるファクタリング)は支払企業の高い信用力の下に成り立つスキームで、破産などの事由が発生した場合や、予め予定していた投資家が、経常損益の一定の状況や純資産の一定の額を割ることなどを条件に、信託受益権譲受を拒否した場合などに、取り扱いが中止になるなど、導入の際に細かい条件をつけることが一般的です。
 
それらの条件は一括支払信託方式での受け取りを支払会社や信託銀行が貴社に提案されたときに示されているはずなので、経理関係部課などが条件を把握されていることと思います。
親会社がファンド会社だから一括支払信託方式を導入する必要がないかは一概に言えないと思いますので、なんともお答えできません。
 

以上です。

取締役を辞めたいが?

相談内容

(相談が長文のため当方で要約しました)
 
従業員数名の小さな広告代理店の取締役をしています。相談は、取締役を辞任したいが、なんの問題もなく辞任できるのか?という悩みです。
 
辞めるにあたって…
1.いままで未払いの役員報酬は請求できるのか。
2.手出しの400万円は請求できるのか。
3.今現在は当社の二つある銀行口座の片方に私の利益が振り込まれています。引き出す際は、未払いの役員報酬という名目で引き出しており90万円ほど手元に還ってきています。また、私のクライアントからの報酬は翌々月の15日払いなので今すぐに辞任すると翌月の分や翌々月の分がもらえるのかが不安です。


回答

① 取締役の辞任についてはこちらの回答を参考にしてください。
 
② 役員報酬の未払い分と会社への貸付の100万円についての請求はもちろんできます。ただし争いになるようなら、証拠が必要でしょう。もし預金口座を通さないやりとりで帳簿にも記録が残っていない場合、相手が認めない限り難しいかもしれません。
 
③ 出資した300万円については、実質上、会社に対し株の買取請求できますが、一般的に株価は会社の資産から負債を差し引いて算出する純資産を発行株式数で割ったものが一株の価値です。もし会社が債務超過の状態であれば、株の価値はゼロとなりますが、それが出資というもので、貸し借りとは違うことは理解しておかなければなりません。もし社長が応じるならお互いに合意できる金額で社長個人に売却するという道もあるでしょう。その場合は交渉が必要となるでしょう。

元社長が過去の貸付金の返還を求めてきたが応えるべきか?

相談内容

10年前、経営不振のため前代表取締役の後任となり、事業を始めたものの私の個人貸付をしながら細々と株式会社という名目ではありますが、実質一人親方のような経営をしております。
先日、前代取より連絡があり、自分が代取をしていた頃に会社の契約に支払った保証金100万は自分が会社に貸したものであり、その後、その保証金を契約した相手方から会社へ返金があったのだから返済してくれとの連絡がありました。
 
内容としては最もなのですが、自分が平社員の頃の話であり、代取の変更時にはその件については「問題ない」ということでしたのに、今現在は言った言わないの話となっております。会社として利益が上がっているならまだしも、支払える状況ではありません。
 
株に関しては、前代取のほうが過半数以上持っておりますので、自分としては会社に執着はないので、何かいいお知恵はないかと相談いたしました。
自分に分がないかもしれないという気もしますが、よろしくお願いいたします。


回答

社長からの借入について書面などで明確にしないまま引き継いだのは、確かに良いことではなかったと思います。元社長にそのつもりがあれば、債権放棄というかたちで清算することもできたはずなのに、それをせずにあなたに引き継いだのは、将来請求できる余地を残しておこうという気持ちがあったのかもしれません。
 
文面から判断できる範囲での回答となることを最初にお断りした上で、以下のように回答させていただきます。
 
まず、元社長への返済について「内容としては最も」と書かれていますが、そのことに疑問を感じます。もちろん一般的に債務は弁済しなければなりませんが、保証金を社長のポケットマネーに頼らなければならなかった責任は誰にあるのでしょうか?
 
前社長が保証金のための100万円を会社に貸し付けたときに、どの程度の役員報酬をとっていたのかを過去の帳簿などが残っていれば確認してみてください。もし会社の状況が赤字であったり、債務超過であったりと、あまり良くないのにも関わらず、それに見合わないほどの役員報酬をとっていれば、元社長の貸付金に頼らなければならなかった責任が元社長本人にあったことの証拠です。そのような事実があれば、「元社長が無理な経営の結果作った借金」ということになり、法的な争いになった場合でも、辞任後とはいえ取締役責任のある元社長にとっては不利になるでしょう。
 
また、そのような事実に頼らなくとも、そもそも保証金が戻ってきたのならば、何故その時に会社から返済してもらわなかったのでしょうか。それは、その当時に別の支払などで資金繰りが元社長自身できなかったからではないでしょうか。資金繰りをやるのも社長の責任です。それができないような状況に陥ったから、経営者を交代したのではないのでしょうか。そのように話してみてはいかがでしょう。
 
逆に「あなたが経営者の時につくったものだから、けじめとして債権放棄してください」というくらいの強気でいいように思います。
 
もしそれが通じないようなら、「借金を作った責任の所在を考えると、事業の継続に必要な取引先への支払より優先すべきものでない。もし無理を通すのなら、事業の継続が困難なので、最大株主として会社を清算するか、代表取締役を辞任させてくれ」と迫ってみてはいかがでしょうか。
 
話し合いがうまくいかなくても、弁護士費用や裁判所に支払う裁判費用のことを考えると、おそらく100万円程度の争いで裁判沙汰になる可能性は少ないと思います。また、上記の理由から相手に分があるとは思えません。相手がとってくる手段として考えられるのは、支払督促と差し押さえです。その場合、まず内容証明郵便などで請求してくるはずです。
 
内容証明などによる請求が来た場合は、以上のような理由で払えない旨を相手の要求する期限か2週間以内に内容証明郵便で通知するとよいのではないでしょうか。
 
以上です


その後相談者から下記のお礼の言葉が届きました。
 
こんにちわ。
丁寧で詳細のわかりやすい回答大変ありがとうございます。
「証拠」社会の中で、その時の感情や温情のみで引き継いだ自分にも責任あると思い、悩んでおりましたが、先生のお言葉で、自分の免罪符がいただけたような気がします。
それを踏まえたうえでの解決に導きたく思います。
略儀ではありますが、文面上にてお礼申し上げます。ありがとうございました。取り急ぎお礼まで

手形の発効日以前の日付で裏書が可能でしょうか?

相談内容

11月28日に入金予定だった手形を12月2日に受け取りました。廻し手形でしたが、そのうち1枚が振出日が12月1日のものでした。この手形を11月中の売掛回収として扱うことは出来るのでしょうか。
 
また、この手形を裏書するときに同じく11月中に買掛金を支払ったという扱いにしたいため裏書日を11月28日としたいのですが、この取り扱いも無理でしょうか?
教えてください。


回答

まず、このような経理上の操作が貴社の関係先にどのような影響を及ぼすのかは当社としては知りえないという前提でお答えさせていただきます。
また、裏書日が振出日より前であるような手形は、銀行が割引にも取立てにも応じません。手形交換所に渡った時に日付の訂正を求められか、無効扱いとされます。
 
そのことを踏まえた上で、お答えいたします。
 
貴社の売掛債権または、仕入債務がいつ消滅するのかは、一般に、発行する又は受け取る領収証の日付で証明されことになりますが、その裏づけとなる金銭の授受又は手形の授受があることが前提となります。
その手形については形式的な振出日や裏書日ではなく、実際の授受による日とするのが普通ではないでしょうか。そうでなければ、如何なる理由があるのかは分かりませんが、当事者間の同意があったとしても最終的に金銭にならない手形を授受するというのは正常ではありませんし、裏書して廻す相手が同意するとは思えません。仮に相手の同意のないままに廻された手形は、後に偽計行為として処罰の対象となりかねません。
 
以上です

会社への貸付金は会社が倒産した場合どうなるか?

相談内容

現在、零細企業の取締役を勤めています。
現在の社長が起業するときに一緒にやろうといわれて、起業当初から取締役を務めていました。(株式は15%持っています。残りは社長が所有)
しかし、起業から1年間売り上げが上がらず、先日社長から「報酬を半分にするか、辞めるかして欲しい」といわれました。
 
私は、辞めるのは構わないのですし、そのことで社長と争う気はありません。しかし、過去の赤字補填のために私は会社に200万以上の貸付があります。
それを返済してもらいたいと言ったところ、「会社にお金がないから無理」と言われました。
そこでここのサイトでの相談を元に、請求書を送るといったら「そしたら会社潰せば、払う必要はなくなる」と言われました。
 
確かに借用書などはありません。ただ、私が経理等も任されていたので、帳簿などには貸付けたことが記載されています。
会社から、何とか返済させる方法はないのでしょうか?
図々しいお願いですが、なるべく早い回答をお願い致します。


回答

あなたの相談をまとめると
 
① 会社から貸付金の返済を求められるのか
 
② 会社が倒産した場合はどうか

とまとめさせたいただきました。
 
① もちろん貸付金の返済を請求することはできます。
問題は争いになった場合の借用書等の証拠の問題ですが、会社帳簿でも、整然とした帳簿の中に記載してあってその貸借に係わる資産の変動が明記されているものであれば証拠として充分な意味があります。
 
② 会社が倒産した場合、会社の残余財産での支払い能力があるかどうかです。もし社長が会社財産による私財をつくっているようなことがあれば、訴訟により社長個人に対する支払請求も可能です。
しかし、一般に倒産しかかった会社や代表者個人に支払い能力がないのが一般的ですから、訴訟を起こすにしても支払い能力をよく確かめてからにした方がよいと思います。もし支払い能力がない場合はいくら裁判に勝っても「費用ばかりかかって金にならない」ということになります。
ただし、将来会社に支払能力が復活することもあるかもしれませんので、支払の請求だけは継続しておくことをお勧めます。請求は何も内容証明とかでなくても、複写式の請求書で送ることで結構です。
 
以上です

就業規則で退社後の競業他社への就職を制限しているが、よいのでしょうか?

相談内容

先日は相談の回答(No.74)有難うございます。
質問の内容で就業規則の事に関して同業の転職範囲には触れましたが再確認しましたら、『社員は退職後1年経過するまでの間は会社と同一種類又は類似する種類の事業であって且つ、会社の本社・営業所から半径10キロ以内に所在する他社において営業行為を行う等、競合する業務に従事したり、また自己の名による営利を目的とする業務に従事してはなりません。』とありました。
 
今後半年内には具体的に検討し、現社員と会社設立に向けて話し合いをしようと思っております。
やはり争いを含め弁護士等に相談し覚悟したほうが良いのでしょうか?


回答

先日いただいた、文面では、期限についての具体的記述がないため、「期限がない」として無効の可能性があると書きました。今回のメールで詳細を見る限り、前回書いたように「あまりにも広範」ということにならない可能性があるようです。
 
そもそも、このような規定は、会社が持つ営業に関わる秘密を他社に漏らされることによって、大きな損害を被ることを回避するために設けています。判例では、「必要最小限で合理的なものなら有効」としています。
しかし、社員にも職業選択の自由がありますので、裁判になった時には必要最小限で合理的かどうかについての争いになっています。
 
有効性についての明確な基準はなく、ケース・バイ・ケースのようですが、
具体的には
・競業避止の期間や地域、職種の範囲
・使用者の利益と労働者の不利益とのバランス
・社会的利害(独占集中のおそれとそれに伴う一般消費者の利益)
といったことを総合的に判断するようです。
 
昭和45年の判例では
「①雇傭契約存続中、終了後を問わず、業務上知り得た秘密を他に漏洩しないこと、②雇傭契約終了後満2年間X(退職前の会社)と競業関係にある一切の企業に直接にも、間接にも関係しないこと」という規定を有効とした判例があります。
判旨では、2年間を「比較的短期間」とし、該当する社員に対し機密保持手当を支給していたということあり、「合理的な範囲を超えているとは言い難く」、「本件契約はいまだ無効と言うことはできない」としています。
 
断言はできませんが、様々な判例を見る限り、今回の会社の規定が期間的・地理的縛りが「合理的な範囲を超えている」という判断にならないのではないかという気がします。
 
裁判を起こすとしたら、今までいた会社側からでしょうから、争いを覚悟するかどうかは、あなたがこれから設立する会社が、どの程度今までの会社に損害を与えるかよると思いますが、あなたが退職して同業の会社を設立し、社員を引き抜いて、顧客も奪うことで感情的な軋轢が生まれるのであれば、損害を与えるかどうかによらずに争いになる可能性は当然でてきます。
 
設立間もない会社に法律的な争いは、新規顧客の獲得上も、従業員のモチベーション上も避けるべきでしょう。
争いにならない方法で会社を運営するためにも弁護士への相談がベストかもしれません。
以上です

会社が倒産しそうなので役員を辞任し退職した場合損害賠償責任はついてくるのでしょうか?

相談内容

損害賠償を受けない役員辞任方法についてご質問です。
現在、社員20名程度の未上場企業の取締役(財務)をしています。会社は設立数年目で赤字、キャッシュ残もあと少しで、今月末に倒産しそうです。
 
役員は社長、私が常勤で、あと2名は非常勤の計4名。社長が営業面、私が経理と管理面を担当しています。私が辞めても役員数に欠員が出るわけではないのですが、赤字で倒産寸前の状態では、会社に不利な時期であり、また私が辞めると経理面でも実務が回らなくなってしまいます。
取引先一部に支払遅延があり、社会保険も数ヶ月未払い、所得税も同じです。
今、第三者割当増資の検討をしていますが、これが失敗した場合、倒産です。役員報酬も高くは無く、数ヶ月払われていません。
 
自分の生活も危ういので、辞任を考えています。増資が成功して辞任が一番ですが、増資の確度は薄い状況です。倒産して再就職でもしない限り、生活が出来ません。
しかし、倒産すると、未払の所得税等は役員に請求されるものだったと思いますので、私と社長の借金になると思われます。
 
会社の借り入れやリースの連帯保証は社長ですので、私は一切関係がありません。
役員が辞任出来るのは、やむを得ない事由がある時というのもあるのですが、
この状況を打破出来るアドバイス等を頂けたらと思っております。ご教示の程、宜しくお願い致します。


回答

あなたからのご相談を整理すると
 
会社の状況が厳しく、支払期限の到来している債務があるばかりか、役員報酬も支払われない状況のため、辞任して、他の会社に就職したい。しかし、経理を担当している私が辞任すれば、会社の実務がまわらなくなる。
 
そのため、
・「『会社の不利な時期』にあたり、辞めることはできない、または辞めれば損害賠償請求を受けるのではないか」と考えている。
 
・辞任したとしても、「債務に対する責任を追及されるのではないか」と考えている。この状況で、責任を追及されずに辞めることができないか。

という内容に整理させていただきます。
 
会社が今月末に倒産しそうです」ということですが、一般的に言われる「倒産」にもいろいろあり、それぞれに違う事態ですので、詳細が分からない今回は、そのことについてコメントいたしません。
 
まず、辞任できるかどうかについてですが、「会社に不利な状況」かどうかは、受理する局面では会社が判断することです。辞任の意向があるのであれば、まずは伝えることではないでしょうか(口頭でも充分ですが、不安であれば内容証明で)。
 
そもそも、あなたが会社を辞めて会社に損害を与えるとしたら、経理などの実務の担当者を失うということにあるわけで、あなたが取締役という立場を失うこととは関係ないのではないでしょうか(いただいた文面からの判断ですが)。
取締役を辞任して経理を担当する従業員として残り、その上で、経理の仕事の引継ぎをして辞職するのか、そのまま従業員として居残るのかを考えればいいと思います。
もちろん本当に「今月末で倒産」するのであれば、経理の引継ぎをやるような時間的余裕はないかもしれませんが、会社に損害を与えずに、直ちに取締役としての立場から離れたいのであればこういう方法になると思います。
 
債権者(取引先や、社会保険事務所、税務署など)への責任については、取締役がその職務執行に悪意または重大な過失があったときには、債権者に対して、会社と連帯して直接責任を負担しなければならないと定めています。
 
源泉所得税の滞納に関しては、場合によっては取締役責任をとらなければならないことがあります。ただし、あなたが形式的な取締役である場合はそこまでの責任はないと思われます。
 
取締役の故意又は重大な過失としては、経営状態が悪く、決済の可能性が低いのにも関わらず手形を振出したり、会社に支払う能力がないことを知りながら多量の仕入れを行ったり、軽率な投資などを行って会社に損害を与える、などの場合でしょうか。また、代表取締役がこのようなことを行っていることを知りながら、それを止めなかった場合も責任を追及されることがあります。そのような事実がなければ、あたなが債権者から責任を追及されることはありません。
 
ご質問についての回答は以上ですが、あなたがもし、形式的な取締役ではなく、経営陣の一員としての取締役であるならば、この「倒産しそう」な状態から、会社をなんとかできないかを考えるのも、取締役の責任だと考えます。増資を申し込んでいるということは、黒字化の目処があるということと理解します。
 
だとすれば、たとえ増資ができないないとしても、取引先や金融機関といった債権者への説明を重ねて、支払を待ってもらうことや返済条件の変更(所謂リスケジューリング)が可能でないのか、また、それができなくても民事再生などの法的手続き(キャッシュがある程度必要ですが)による再生が可能でないのかなどの検討の上で、会社を立ち直らせる最大限の努力をするのが、ベストな方法でないかと思います。
以上です